ー昼間、社内での出来事ー
「難しいんですよ。どうしたら。。。」
と社内の若手に声をかけられる。
取材先のある家は、視覚的なトピックが少ないというのだ。
間取りも外観も、みんなが想像できるもので、視覚的に「おっ!」と思えるものが少ないという。
だからといって、決して駄目な家なのかと言えば、その正反対。
生活するための機能は必要充分以上のスペックで、美しいけど寒かったり、格好良いのだけど、使いにくいということは、まるでないというのだ。
つまり、家族の生活のための道具としての色が濃い家。
それはきっと、タクシーによく使われる
クラウンコンフォートや
セドリック営業車といった働くクルマみたいなものだろう。
飾り気は少ないけれど、乗客も荷物もゆったり乗れて決して当事者=主役の行動の邪魔をせずサポートに徹している。
一日中、そのシートで過ごす運転手にとっても、身体を支えるシートは第一に疲労を軽減するような設計方針となっている。
そして、そこでの楽しみは、きっとクルマそのものには少なく、運転手との会話や車窓からの景色なのだろうと思う。
こうした題材は、僕の場合は逆に写欲をそそられてしまうもの。
どんなものにも、必ず良いときや晴れ舞台があって、絶対に輝く瞬間がある。
それを撮れるかどうかは、その題材をよく知り尽くしているかにかかっていると思うのです。
行動の邪魔をせず、サポートに徹し、主役の力を引き出すもの。
それが、真心だと思いますし、かけがえのない仕事のように思えてならないのです。